2015年01月13日
※米国テスラー社のEVの社内画像(テスラー社HPの資料用画像より引用)中央のタブレット端末のような操作パネルが近未来の車を感じさせます。
トヨタ自動車が単独で保有する燃料電池車(FCV)関連の特許すべての無償提供を6日発表しました。
FCVは、水素と酸素を反応させて水を作り、そのときに余る電子を電気エネルギーとして走行します。純粋なバッテリー式の電気自動車(EV)とは別のジャンルの次世代自動車として注目され、日本ではトヨタ自動車が中心となって進めているようです。かつてのVHSv.sベータ、ブルーレイv.sHDDVD、プラズマv.s液晶のように、世界中の国や企業を巻き込みながらFCV陣営とEV陣営(米国ではテスラー社が有名)に分かれてせめぎあいの様相を呈しています。おそらく、トヨタ自動車としては、関連特許を無償提供することにより各自動車メーカやインフラ関連会社などの他社を巻き込むことでFCVの市場創造を拡大していきたい狙いあるものと思われます。ただ、各社の思惑はさまざまのようですので、トヨタの狙い通りに進むかどうかが今後注目されます。
さて、中小企業にとっては、このような大きな話はあまり関係ないと思われるかもしれませんが、一つ勉強になることがあります。今回のトヨタ自動車のように関連特許を提供して新たな市場を創造する戦略を一般に「オープン戦略」と呼びます。特許といえば、特許を取得した会社が独占的に製造・販売する「独占戦略」のイメージが強いですが、最近ではこのようなオープン戦略が中小企業にとっても注目されています。新たな市場を創造する際、一社だけではなかなか市場が成長せず、結局、その市場が消滅してしまう虞があります。ここで関連特許をあえて他社に提供することにより、他社とともにまず市場を創造して、その上で各社が競争していくわけです。
このようなオープン戦略は何も欧米だけでもなく日本でも成功している事例は数多くあります。その中でも代表的な事例の一つに日清(当時、安藤百福社長)のカップヌードルが挙げられます。カップヌードルを開発した日清は数多くの特許を保有しており、最初は市場を独占する狙いがあったようです。しかしながら、袋めんが浸透している市場において割高なカップめんはなかなか消費者に受け入れられませんでした。さらに追い打ちをかけるように特許を使用しない粗悪品のカップめんが出現し始め、消費者には「やっぱりカップめんは駄目だな」という空気が流れました。そこで、日清は特許を他社に提供することにより各社が良質なカップめんを作れるようにし、他社とともにカップめんの一大市場を創造していき、その中で各社が競争していきました(結局、日清がトップを走ることになるのも安藤百福氏は計算づくだったのではないでしょうか)
このように中小企業にとっても、特許による独占戦略だけではなく、オープン戦略も重要であることはどこか念頭に置いておきたいところですね。
なお、完全に小職の意見ですが、EVについて、遠くない将来、ディアゴスティーニあたりから「週刊・電気自動車」なる組立キットが販売されるかも、と考えています(ちなみに、同社から今年1月に「週刊・3Dプリンタ」が発売されました)。2~3人乗りの超小型、バッテリーも家庭で充電でき、車体はカーボン製の軽量なもので、最高走行距離10~20kmほどの買い物やちょい使いに利用できるものです(価格は30万円ぐらい?)。電気自動車は組み合わせの技術ですので、安全面さえクリアすれば十分可能ではないでしょうか。もしかすると、現在の各自動車メーカは、このように誰でも自動車を安く簡単に作れる未来を恐れているかも!?
(文責:小林正樹)