2015年01月19日
MBSちちんぷいぷいTV画像より引用(弊所代表のコメントが紹介されました)
一口サイズの薄皮ギョーザが人気の「丸正(まるしょう)餃子店」(原告:大阪府大東市)が、ギョーザ専門店「餃子の丸正」(被告:大阪府門真市)を相手取り、表示の使用差し止めと6500万円の損害賠償を求めた訴訟で、被告が原告に商標権を譲渡し、4月以降「中華丸正」の店名で営業するなどの内容で大阪地裁で12日に和解が成立しました。
<中小企業が学ぶべきこと>
原告は、商標登録を行っていないことから、不正競争防止法の周知表示混同惹起行為(同法2条1項)に争っていたようです。この周知表示混同惹起行為とは、需要者の間に広く認識されている他人の商品等表示と同一または類似の商品等表示を使用し、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為をいいます。つまり、原告が仮に商標登録を行っていなくても、他人が周知表示混同惹起行為を行えば、差し止めや損害賠償を請求できるわけです。
ただ、この周知表示混同惹起行為を認定されるためには、「需要者の間に広く認識されている」といういわゆる周知であることが要件になっています。この周知は裁判所においてケースバイケースで判断されるのですが、そう簡単には認めてもらえるものではありません。今回の丸正餃子事件においても、原告の「丸正餃子店」が果たして周知といえるかはきわめて微妙だったのではないでしょうか。万一、被告が争う姿勢を見せ、原告の名称が周知でないと認定されてしまったとすると、逆に被告から商標権侵害で差し止めを受けて返り討ちにあう危険性も秘めていたように思われます。
一方、商標権は、不正競争防止法のように周知は要件とされておらず、商標が同一または類似、かつ商品・役務が同一または類似であれば権利侵害が成立するため、その意味では他社に対して差し止めや損賠賠償を請求し易い権利となっています。
もし、原告が当初から商標登録しておけば、不正競争防止法と商標権の2本立ての武器を持つことになり、訴訟に至るまでもなく決着が付いていたのではないでしょうか。そうれであれば原告は、訴訟費用と商標権譲渡費用を負担することもなく、無用な心労をかけることもなかったと思われます(訴訟は、原告及び被告双方にとって心身ともに疲れるものです)。このため、中小企業はもとより、個人事業にとっても、商品やサービスを展開する上では商標登録は必要不可欠なものといえるでしょう。
<付言>今回、被告から原告に対して商標権が譲渡されることで、一見、被告が譲歩する形で決着がつきましたが、その譲渡費用は有償だったようです。この譲渡費用は非公開なため確かなことは言えないのですが、その譲渡費用が高額なものであるとすれば、両者痛み分けの決着だった可能性もあります。
(文責:小林正樹)