2017年07月04日
これまで紹介しましたように中小企業における特許出願、特許取得
は、業績の向上やヒット商品の誕生に貢献しており、規模が小さい企
業になるほど信用力の獲得や、新規顧客の開拓につながっています。
ところで、特許を取得すればそれだけで業績の向上などに貢献でき
るというものでもありません。市場やユーザー・顧客のニーズを的確
に収集・把握・理解し、それに応える技術を開発する、開発した新技
術が採用されている新製品を市場や、ユーザー・顧客に提案する、こ
れらを総合して会社の業績向上が図られ、その中で、出願・取得した
特許権・意匠権・商標権などの知的財産が活用されることになります。
そこで、企業における特許出願の種=発明の発掘・誕生は、技術開
発部門・生産現場での検討・提案の中で行われるだけではなく、マー
ケティングを受けての技術開発の中で行われることも多いと思われま
す。
A.マーケティングからの技術開発での発明発掘・誕生
企業にとって、常に、市場や、ユーザー・顧客からの要望に応える
ことのできる製品・サービスを提供することは大切です。
この点で、市場の動向、ユーザー・顧客のニーズに常に接している
営業担当者が収集してくる情報は会社の技術開発において大きな意味
を持ちます。
時には、営業担当者が収集してきた市場動向、ユーザー・顧客のニ
ーズについて、生産現場・技術開発部門の技術者も含めて検討する中
で、発明のきっかけをつかむことがあります。
生産現場・技術開発部門の技術者が、営業担当者が収集してきた情
報に接することで、日常的に繰り返している作業の中からだけでは生
まれてこない新しい視点、発想を得ることができたり、市場に存在し
ている他社製品に包含されている他社の技術と比較した自社技術の強
い点、弱い点に気づくことがあります。
こうして、市場やユーザー・顧客のニーズに応える技術の開発が行
われます。例えば、自社技術の強みを活かして、あるいは、自社にな
かった技術を新たに取り込んで、市場やユーザー・顧客のニーズに応
える技術が開発され、発明が発掘され、誕生することになります。
市場やユーザー・顧客のニーズをいち早く把握し、そのニーズに応
える新技術・新製品を創作・製作し、それをいち早く特許出願して特
許取得すれば優位に立つことができます。
また、このような知的財産活動の中で、営業部門、生産・技術開発
部門を問わず、社員が、市場の動向、ユーザー・顧客のニーズに関す
る情報に敏感になり、会社の事業の中における、発明の創作、出願・
特許取得などの知的財産活動の意義を認識できるようになることが期
待されます。
B.技術開発部門・生産現場での発明発掘・誕生
どのような生産現場でも不便や困難を感じるところが存在したり、
より良い製品を提供するためにもう少し改善・改良できないだろうか、
と感じるところが存在すると思われます。
これらの改善・改良を技術開発部門・生産部門で検討する中で発明
が発掘され、誕生します。
一つの問題点・課題を解決する提案がなされれば、最初の問題点・
課題は解決できても、次の新たな問題点・課題が浮かんでくることが
一般的です。
例えば、生産能力を向上させたいということで、処理速度を速めれ
ば、騒音が大きくなる、機械の構造の耐性が不足する、等、次の問題
点・課題が浮かんできます。
この無限ループ、螺旋状的な、問題点・課題の把握・抽出、それに
対する解決策の提案、これによって浮かび上がってくる新たな問題
点・課題の把握・抽出、それに対する次なる解決策の提案、・・・を繰
り返す中で、より競争力のある、より良い製品を提供する上で、実際
に採用することを検討できる発明が発掘され、誕生することが多いと
思われます。
また、このような技術開発部門・生産現場での検討を通じて、会社
が市場に提供している製品・商品をより競争力がある、より良いもの
にしていく上での解決すべき課題・問題点の把握方法、課題・問題点
に対する解決策の案出方法が、技術開発部門・生産現場で働いている
社員全体に共有され、会社の人的、知的な財産として蓄積されていく
ことが期待されます。